アユの生活史

 

<春>

海で育った稚アユが、川を遡上します。河口から35km上流に位置する明治用水頭首工付近では4月上旬頃から遡上が始まり、ピークは例年ゴールデンウィーク頃で6月一杯ぐらいまでまとまった遡上がみられます。この時期、魚道では元気よく川を遡るアユの姿を観察することができます。
 

<夏>

遡上したアユは、石についたラン藻やケイ藻などの付着藻類を食べながら大きくなります。アユは成長と共に餌場をめぐるなわばり争いを起こすようになりますが、この習性を利用したのが友釣りです。矢作川本流では久澄橋(河口より39km)付近から上流に友釣り漁場があります。
 

<秋>

夏に成長したアユは、10月頃より中下流の瀬のやわらかい砂利底で産卵します。産卵場は各ダムのダム湖から上流にもっとも近い瀬で形成されますが、海にまでアユが辿りつくことができるのは明治用水頭首工より下流の産卵場と考えられています。天然アユ調査会が2008年から3年間にわたりおこなった調査によると、主な産卵場は葵大橋(河口より32km)から(産卵を終えたアユは年魚のため、産卵後に死んでしまいます。産み付けられた卵は2週間程で孵化し、仔魚は川の流れに乗って海に流下します。矢作川の米津橋付近では11月頃に流下のピークを迎えます。
 

<冬>

流下したアユ仔魚は、翌年の春まで海で動物プランクトンを食べながら成長します。この時期のアユはシラスとよばれる半透明の体をしており、川で生活するアユとは形態が全く異なります。唯一、背びれの後ろのアブラビレがあるのが成魚と共通した特徴です。矢作川を下ったアユがどこまで分散するかは不明ですが、他の海域での事例を参考にすると、少なくとも河口から20kmは分布を広げるようです。